在ハガッニャ日本国総領事 玉井研志
2002年4月
平穏無事を祈りつつ迎えた21世紀ですが、新世紀早々の昨年には、米国では史上最悪の悲惨な同時多発テロが起こり、この事件は世界中の人々をテロの恐怖と不安におとしいれることになりましたが、太平洋に浮かぶ日本に最も近い平和なリゾート地グアムにも深刻な影響を及ぼしました。
オールシーズン陽光は燦々とふりそそぎ、一年中色とりどりのブーゲンビリヤ、ハイビスカス、プリメリヤの花が咲き競い、サンゴ礁のエメラルドグリーンが美しい海でかこまれた南国情緒豊かなこのグアムを、日本からは年間約100万人近くの観光客が訪れます。グアムの経済はこの日本人観光客による観光収入で支えられているといっても過言ではありません。
ここ数年は日本の長引く経済不況によって日本人観光客も減少傾向にあり、グアムの経済はもとより、在留邦人の8割以上の方々が従事している観光業も不振で苦しい状況にあったおり、昨年9月11日に起こったあの忌まわしいテロによって、当地の観光業は深刻な打撃を受けることとなりました。
テロ直後は、米国領土内における全ての航空機が離発着停止になり、グアムでも帰国できなくなった観光客が日に日に増えて、一時は一万数千人にも達し、旅行者の滞在費や食料など憂慮すべき事態になりました。
直ちに総領事館からはワシントンの日本大使館に対して、グアムは米国本土の西海岸から約6,000マイルも離れた、太平洋上に浮かぶ日本の淡路島ほどの小さな島であるという地理的な事情を考慮して、救援機のグアム空港離発着を特別に認めてもらえるように米連邦航空局(FAA)への強力な働きかけを依頼しました。同時にグアムにおいてもギテーレス知事、アンダーウッド米連邦議会代表、グアム空港長等々関係者に対して、観光客の長期滞留はグアムの死活問題であり、地理的な特殊事情を理解して早急に空港再開を認めてもらうようFAAに強く要請するように申し入れました。
これらのことが功を奏し、おそらくグアム国際空港は米国領土内の空港では最も早く再開が認められ9月15日午前1時30分日本から救援の一番機が到着し、その後は日本航空、全日空のご協力による臨時便が続々運航され、滞留されていた観光客の皆様は長い人でも3日間程度の足止めで帰国していただくことができました。
この間旅行各社、ホテル、レストラン関係など皆さんは協力して、宿泊料や飲食代等割引の便宜を図って、旅行者に優しい観光地グアムのイメージを損なわないよう大変努力されました。
テロから半年余り過ぎた現在は、日本から訪れる観光客の数もほぼテロの前に戻って関係者の皆さんも安堵しております。
日本から約3時間15分の飛行時間と時差1時間というアクセスの良さで、グアムはお年寄りや子供連れの親子3世代が一緒に楽しみ、家族のきずなを深める海外旅行には最も相応しいリゾート地として最近は特に人気が高まっています。
従来のグアム観光は、若い人を対象にしたマリンスポーツや免税のブランド品ショッピングの買い物といったところが人気の中心となっていましたが、近頃は日本人の海外旅行も多様化し、小高い山を登ったりなだらかな丘陵地帯を歩いてトレッキングを楽しむ中年の旅行者から、定年後と思われる熟年夫婦が2人連れで、雄大なコバルトブルーの海に沈み行く夕陽を見ながらのんびり散策したり、あるいはゴルフを楽しんでいる中高年の方々を多く見かけます。
4月18日からは成田に新しい滑走路がオープンし、グアム便も増便されるため、旅行者にとってはますます便利になりますので、「貯蓄は美徳」と教えられてきた中高年の皆さんが、安らぎと癒しの時間を過ごすにはグアムは最も相応しいところです。
日本経済が長期低迷から抜け出せない一因は、約1,400兆円にのぼる個人資産の大部分を占める高齢者の預貯金が動かないことにあると言われています。この貯蓄がある時期日本経済の高度発展を支え、大きく貢献してきたのも事実です。しかし、世の中は変わって今はこの貯蓄されている個人資産を如何に活性化するかが日本経済にとって大きな問題であり、消費が奨励される時代になっています。時間とお金にゆとりが生まれた中高年の人々には、慌ただしい文明社会から一時遠ざかり、先ずはゆったり流れる時間の中に身を置いて21世紀型の新しいライフスタイルを考えられては如何でしょうか。
他方現在大変厳しい経済状況にあるグアム側においては、観光客の80%以上を占める日本人旅行者のニーズに応えられるような眺望の素晴らしい散策路を整備し、気候風土を活かしたトロピカル・フルーツの生産・販売など魅力ある付加価値をつけることによって観光産業の振興を計ることは、人口16万人強のグアム経済再建には最良の施策と確信しております。
現在羽田空港からはチャーター便の離発着だけが認められていますが、これが近い将来国際空港になって、海外旅行が一層便利になってグアムを訪れる観光客も更に増えればグアムの経済も活性化し、約3、000人の在留邦人の殆どが携わっている観光業も大いにその恩恵に浴することになります。グアムでは毎年10月末頃に日本人会主催で「秋祭り」が盛大に行われ、日本人をはじめグアムの人々も大いに楽しみにしています。昨年はテロで残念ながら取りやめとなりましたが、今年は以前にも増して大いに盛り上がることを期待しています。 |