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1998年6月11日から14日までの4日間、勤務先の35周年記念旅行で娘を伴ってグアム島を訪れた。日本から最も近いアメリカである。新幹線でちょっと東京から大阪へ行くような手軽な感覚で、関西空港からも成田からも三時間余りで行ける近さである。関西空港からは三時間十分で着く。私たちは、丸の内や神戸大阪のOLが最も利用するという深夜便で出国し、最終日は殆ど眠る間もなく深夜午前2時に起きて、早朝便で現地を発った。そして、早朝の6時半には関西空港にいた。
三泊四日の「夜討ち朝駆け」のような過酷なツアーである。三泊四日といっても実質は一泊二日みたいなもので、ゆっくり眠れるのは一日しかない。こんなことになったのは、JTBへの申し込みがちょっとばかり遅れたために夕方発の夕刻か夜に戻って来る便が取れなかった所為である。元気印のOLさん達のタフさに只々脱帽するばかりである。
彼女らは、金曜日の深夜にJALやANAで日本を発って、土日をタモンビーチでショッピングをし、時間があればココス島の舟遊びや観光を楽しむのだそうである。そして、日曜日の真夜中に発って月曜日の早朝に成田や関空に帰国し、その足で会社には始業時間に間に合うように出勤するというハードなツアーである。丸の内ではこれが大流行らしい。
グアム島は淡路島より一回り小さい。タモンビーチと恋人岬くらいが観光の目玉だろう。そんな大して観光資源が豊富とも思えない小さな島に年間150万人もの観光客が訪れるという。しかも、その殆どが日本からの観光客である。沖縄や北海道に旅するより費用も安いし、デューティーフリーショップに行って、ブランド品が自分の目で確かめて実際に手に触れて買えるのが大きな魅力のようである。産業らしい産業もない基地の島で、唯一の収入源が観光だけであるところは沖縄とそっくりである。
和弓を引き絞ったようなタモン湾の中心部には、ミニワイキキのようなホテル街がある。どのホテルも敷地がゆったりと広いのは魅力的である。街中にも浜辺にも人間が溢れておらず、もの静かなリゾートといった佇まいで、その鄙びた静かさがいいという人もいる。ワイキキを昔の喧騒の熱海にたとえれば、グアムは山奥の鄙びた隠れ湯とまでは行かないが、常連さんの湯治場といったところだろうか。私には、やはりアメリカは「陽気なアメリカ人」の街であって欲しい、という思いがした。
日本企業の系列ホテルが多いのはやはりワイキキと似ており、ホテルでも街中でも日本語が殆ど支障なく通じるのはありがたい。ホテルの周辺には、免税店やお土産店やブランドショップや実弾を撃たせてくれる射撃場などが小さな街を形成している。「一富士」だったか「鷹富士」だったか忘れたが、岐阜に本部があるというラーメンのチェーン店もあった。観光客らしい白人の老夫婦と常連さんらしい現地のタクシー運転手さんが美味そうに餃子を食べていた。
私はアロハを買い求めようと楽しみにしてグアムに行ったが、数軒、お土産店を覗いて見たが、どこにも気に入ったものがなかった。やはり、良いアロハはハワイにしかないようである。そのうちまたハワイに行くこともあるだろうと思い買うのを諦めた。買いたいものもなくなって、お土産店を冷やかして廻っていたら、道路端に座り込んでいた老人が私を見上げるようにして「お客さん、ブランド品の偽物があるよ」と囁き掛けるように、呟くように声を掛けてきた。
定かに聞き取れず「え?え?何か用かい?」と思わず腰を屈めると、店内へ入れと言う。店内にはお土産品が並んでおり、一見普通のお土産店であったが、奥に小部屋があっておびただしい偽ブランド品が天井から所狭しと陳列してあった。大体、本物の十分の一の価格である。本物と偽って売っているのではなく、正直に「偽物だ」と言って売っているのだから、良心的と言えば良心的である。
しかし、アメリカには偽物はないと思っていたので、ホテルから程近い道路脇に偽物ブランドを売っているお土産店があったのには驚いた。気さくな気のいい経営者で話が弾み、本物なら7万もするルイヴィトンの財布を5千円値切って7千円で買ってしまった。それも、一緒にいた娘に腕飾りのおまけまで付けて貰って・・・。
白人は探すのに一苦労するくらい少ないが、やはり車王国アメリカである。道路の広さを目の当たりにすると、ハワイもそうだが、「やはり、アメリカだな」と実感する。疎らにしか走っていないメイン道路は片側4車線である。その広い道路を日本車が疾走している。不思議なことにフォードやクライスラーなどのアメ車は滅多に見掛けない。走っている車や駐車場に停まっている車は殆ど全部日本車ばかりである。
娘は初めての海外旅行であった。鄙びているとは言っても、やはりどこかにアメリカの香りがする。しかも、どこへ行っても日本語が十分通じる。お土産店での打々発止(ちょうちょうはっし)の値引き交渉や、南国の強い陽差しは楽しかったようである。空港からホテルまで浅黒い肌の現地人と日本人観光客ばかりで、アメリカだというのに白人が一人も見当たらないのには吃驚していたが・・・。確かに三日間の滞在期間中、街中ではブロンドの白人女性は一人も見かけなかった。
グアムは治安もさほど悪くない。数人の団体行動であれば、女性だけでも夜の散策が楽しめるくらいである。やや危ないなと思ったのはショッピングモールくらいなものである。そこでは目付きの鋭い盗人らしい子供の一群が散見された。しかし、油断さえ見せなければ、危害を加えるような性質の悪い不良はいないように見受けた。
海外旅行の楽しみはお土産店での値段交渉であるが、グアムは余り値引き要求に応じてくれない。これは予想外だった。華僑や韓国系のお土産店が少ないのも理由の一つであるかもしれない。正札から15〜20%引きくらいがいいところで、余りしつこく値切ると現地人の店員さんが怒り出してしまう。恐らく、観光客が少ないためにスレていないせいだろう。